まだ50歳の頃だったと思う。くそ暑い日に
タイのチェンマイのとてつもなく広い、
一日ではすべてを見て回るのは
不可能と思われるほど大きな青空マーケットを
友人とブラついていたときだった。
何千何万何十万、いやそれ以上無数にありそうな物の
中から、よくもまあ出会えたものだ。
それはいかにも東南アジアにありそうな
薄汚れひなびた雑貨屋の店先に
どうでもいい物のように置かれていた。
ふたつの大きな羽をもった亀。
きもちよさそうに空を飛んでいた。
その不思議な姿にびびっときた。
亀って羽あったっけ?
そんなことどうでもいい、
こいつは今日からもうひとりのボクなる。
うすのろだけど水中でも陸上でも生きながらえて、
そのうえ空中も飛べるなんて。
これはあとづけの理屈だけど、そういうふうに
自由に自在に生きていけたらなあ。